様々なジャンルの先生方にお試し入門し、おけいこの様子をつまびらかにレポートする本コーナー、次なるターゲットは小鼓です! 小鼓はお囃子の一つとして、さまざまな伝統芸能で耳にする機会があります。イヨ〜ッ、ポン! のあの楽器。あの「イヨ〜」が1度やってみたかった。
というわけで、能楽囃子方大倉流小鼓方宗家・大倉源次郎先生の門をたたきました。いきなりご宗家に直撃。素人は怖いもの知らずです。はい。
大倉源次郎先生。素敵すぎです♡
おけいこは全4回。高砂の待謡(まちうたい)の部分をマスターするまでがゴールです。ご宗家のおけいこということで、やや緊張の面持ちで迎えた初回。いきなり鼓を持つ前に、まずは「エアー鼓」で練習です。左手をグーにして右手のてのひらで受け、そのまま右肩へのせる。そして右手で打つ。
譜面はこちら。
囃子方というのは楽器を鳴らすだけでなく、かけ声をかけるのも重要な役割。小鼓の場合、この掛け声には「ヤ」「ハ」「イヤ」の3種類あり、譜面にしっかり表記されています。即興で発しているのではなく、すべて決められているのですね~。 ちなみに、「ヤ」と記されているからといって「ヤァ」とかけ声を出すのではなく、「ヨォ」と発音します。「ハ」は「ホォ」。これが初心者にはなんとも紛らわしい。目で見た文字をついついそのまま発音し、「ヤァ!」とか「ハァ!」とか、間抜けな掛け声が出てしまう。ちなみに「イヤ」はそのまま「イヤー」。ここで初めて能の場合は「イヨ~ッ、ポン!」ではなく、「イヤーッ、ポン!」であったことを知ったのでありました。
さて、エアー鼓で何度か練習をしたら、実際に鼓を持ってみます。驚いたことに練習用の小鼓ではありません。先生が実際にお舞台で使うこともある小鼓です。皮は300年くらい経ったもの、胴は安土桃山時代のものもあるとか。ひえ~。
おそるおそる持ち上げ、かまえ、そして打ってみます。
……鳴りません。
300年と聞いて遠慮が立ちすぎたか。 もう一度、打ってみます。
……鳴りません。
指があたる音がするばかりで、鼓の音色とはほど遠い。 比べるのも何ですが、源次郎先生の音は花が開く瞬間のような、広がりと奥行きを感じるのに、我々が打つと伸びきったゴムのような、なんとも間の抜けた音がむなしく響くばかり…。 指先から打ちに行くのではなく、後ろに物を放り投げるようにてのひらを鼓の縁に当て、その結果として指が皮に当たる、というようなイメージで、と先生はおっしゃるのだけど、指先の力を抜くことがなかなか難しい。抜いているつもりで抜けていないのが力かな。(字余り)
さて突然ですが、ここで、我々の課題曲「高砂」の待謡のお手本をお聞きいただきましょう。
これを4回のおけいこでマスターできるのか。乞うご期待!
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