日本舞踊と西洋音楽との共演は、かなり以前から「創作舞踊」として実験的に行われてきました。
そんな取り組みに対しては<ジャンルが違えば人が違う>を顕著に表したような感想を個人的にはチラホラと耳にしたり…。それでも伝統芸能と他ジャンルとの共演はなくなるどころか増えている様にも感じます。1つの舞台のあり方として受け入れられ、定着してきているということなのでは。確かに、まだまだ実験的なところは多々ありそう。長い時間を掛けて様々な芸能が発展していったように、現在進行形で新しい舞台への取り組みが続けられています。思いもしなかった組み合わせが、実はもの凄く魅力的なものを作り出す可能性。もうこればかりは絶対に観てみないとわからない!
『日本舞踊×オーケストラ』は、花柳流四世宗家の花柳壽輔さんが総演出を手がける、古典と現代、東洋と西洋が融合した舞踊(ダンス)公演。花柳壽輔さんは、日本舞踊はもちろんのこと、西洋芸術にも造詣が深く、また、ご自身の長年のキャリアを通して蓄積された、知識や経験、人との繋がりを通じて、今回の公演を構成・演出されることになったそう。花柳壽輔さんの公演に掛ける思いや意気込みは、ぜひ記者会見やインタビューをご覧ください。演目・出演者を決めたきっかけやストーリーなど、様々なところに意味が込められているということが伝わってきます。
実はこの公演、今回が2回目。東京文化会館では50年の歴史の中で、多くの楽曲、舞台作品の世界初演や日本初演が多数行われ、時には熱狂を、時には激しい議論を巻き起こしてきたました。文化的磁場であり続けた東京文化会館では、主催公演においても「創造・発信」をテーマに、新しい舞台芸術作品の創造に積極的に取り組んできました。2011年には開館50周年記念公演として黛敏郎のオペラ「古事記」の舞台版を日本初演。2012年12月には、50周年を経て、新たな一歩として、「日本舞踊×オーケストラ」が初演。その際は、バレエ演目を日本舞踊の振り付けで踊るという点、日本舞踊(花柳流)と京舞(井上流)、能・狂言と日本舞踊(郡舞)による共演など、伝統芸能の異分野の演者による珍しい共演が話題に。さらには、千住博さん、金子國義さんらによる舞台美術でも注目を集めました(過去の公演情報はこちら)。NHKでも舞台の模様が放映されたため、目にされた方も多いのでは。
今回のVol.02は、Vol.01を経て新たな異分野の出逢いによって生み出される、これまでにない舞台創造です。オーケストラによる演奏はもちろんのこと、さらに趣向を凝らし、伝統芸能分野以外からの出演者も参加。宝塚歌劇団の男役トップスター轟悠さんやバレエダンサーの吉田都さん、現在は舞台女優としてご活躍の元宝塚スター麻実れいさん。舞台の雰囲気を決める舞台美術には横尾忠則さん、森英恵さんによる衣装も見所です。また、ここん一押しの五耀會メンバーでもある、藤間蘭黄さんや花柳寿楽さんもイケメン役でご出演。他にも今注目の日本舞踊家達が総出演の公演は、なかなかみることができないはず。
多彩な要素を取り入れた、エンターテイメント性もありながら芸術性も兼ね備えた公演は注目です。
詳しい出演者/演目/その他公演に関する詳細は、こちらからどうぞ。
[スケールの大きな出会いが、新たな可能性を照らす]
遠い太古の昔、音楽、神話、舞踊、祭祀などと呼ばれるものは、分かちがたく混然とそこにあった。以来、生活と労働を超えた次元で、人々はいつも「創造する」ことへの欲求を多様な領域で満たしてきた。過去から現代へ連綿とつづく、輝かしい遺産。日本舞踊、オーケストラ、バレエ、宝塚など、それぞれが培ってきた芸域の個性は、唯一無二のものだ。21世紀の今、東と西の文化が、古典と現代が、ジャンルを超えて出会う。しかも、もっとも磨きのかかったアーティストたちの、スケールの大きな出会いだ。何かがスパークする。そして「創造する」ことへの新たな可能性を照らすはずである。
舞踊評論家 石井達朗
(c)青柳聡、写真提供:東京文化会館
【公演概要】
公演日:2014年12月13日(土)18:30開演 / 12月14日(日)15:00開演 場所:東京文化会館 大ホール(上野)
構成・演出:花柳壽輔 監修:植田紳爾
演目:
葵の上(源氏物語より)
音楽 黛 敏郎「BUGAKU」より第二部、「呪」 出演 市川ぼたん、花柳寿楽、藤間恵都子 他
ライラックガーデン
音楽 ショーソン「詩曲」 出演 藤間蘭黄、水木佑歌、花柳源九郎、尾上 紫 他
いざやかぶかん
音楽 ガーシュウィン 『ポーギーとベス』組曲より「キャットフィッシュ・ロウ」 出演 轟 悠 他
パピヨン
音楽 ドビュッシー「夜想曲」 出演 花柳壽輔、麻実れい
ボレロ
音楽 ラヴェル「ボレロ」 出演 吉田 都、日本舞踊家男性群舞三四名
指揮:園田隆一郎 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団 合唱:新国立劇場合唱団
Comments