今年1月から取り組んできた我々のおけいこも、とうとう大詰め。 やはり締めくくりは発表会でしょう、ということで、 この度もおけいこの成果を披露する機会が予定されています。 しかしその発表会の存在をかたくなに黙殺してきたゲストメンバーN氏。 そうはさせじとじわじわと外堀を固める周囲。 今回はそんなN氏の苦悩と焦りの日々をお届けします。
Text by ここんゲストメンバーN
おかしいなぁ… 何かがおかしい…
あれは確か昨年の9月ごろ。ここんメンバーのK女史から招待を受けて、「ゆかた会」こと長唄のお稽古のお披露を赤坂金龍まで観に行った少し後のこと。 食事をしながら「楽しかったよ!」なんて感想を言っていたら、「今度は長唄の三味線を習う企画があるんだけど、どう?」とK女史。
和楽器に興味はあったものの、ピアノを習っていた経験からレッスンと発表会がどれだけ大変なものか身に染みていた自分にとって、この年齢で新たに習い事をするのはさすがに即答できる案件ではありませんでした。とりあえず、「発表会に出なくてもよかったら、ちょっと考えてみる」と緩めの返答。思えば、あれがすべての始まりだったのです…。
なんとなく顔合わせの日取りが決まって、なんとなく初日のお稽古日が決まって、気が付けばなんとなくお稽古にも参加していて…。
ところが、三味線は思ったよりも音が大きくて自宅では満足に練習もできない上に、多忙で3月4月と丸二ヵ月間お稽古にすら参加できない有り様。
まぁ、でも発表会に向けて皆さんが真剣に練習に取り組むころには、自分は離脱するし…などと思いながら5月の連休明け久々のお稽古に向かうと、ここん某メンバーさんから唐突に「浴衣持ってます?」との質問。
嫌な予感しかしない…。K女史に「僕、発表会出ないって皆さん知ってるよね?」と目で訴えても知らぬ存ぜぬモード(約束は書面に残すことが重要です、笑)。それだけはご勘弁くださいと固辞するも、栄八郎先生がご自宅で個人レッスンをしてくださるとお申し出下さった上に、浴衣まで貸して下さるとトントン拍子に話が進み…。
完全に外堀が埋められました(苦笑)。
周回遅れ状態の自分のために、苦手な部分を1/2の譜割で書き起こした自筆の譜面までご用意くださった栄八郎先生のご厚意に報いたいのはやまやまなのですが、発表会だけは…。ともあれ、せっかくの機会なので、栄八郎先生の特別レッスンを受けに、ご自宅まで行って参りました。
栄八郎先生は常々、「本当は一対一の稽古の方が教えやすい」とおっしゃっています。今回はみんなで一緒にお稽古を受けるというある種の企画モノなのではありますが、それでも普段のお稽古時から自分の至らなさゆえに栄八郎先生を独占してしまうことがしばしばあり、皆さんに申し訳ないなという気持ちがありました。
個人レッスンは文字通りの一対一なので、周りの方々の進捗状況を気にする必要もありません。至らないところはその都度止めて集中的に教わることが出来るので、全体の流れの中で特にどこがダメなのかがよくわかります。
栄八郎先生宅での個人レッスンの翌日、自宅でひそやかに練習を始めると、これまでとは明らかに「何か」が違うことに気づきました。具体的には説明が難しいのですが、「掴めたな」という実感があったのです。
人前で演奏するかもしれないという緊張感も功を奏したのかもしれません。
発表会まであと1か月ちょっと。 そろそろ本番に向けて足袋を買いにいかないと。
危ない、危ない。すっかり発表会に出るモードになってる? こんなはずじゃなかったのに。
おかしいなぁ…。
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