2014年3月某日。 とうとうおさらい会の日がやってきました。 すでに9ヶ月も前のことです…。ご報告が遅くなってスミマセン。 消費税増税直前の年度末とあって宅配業者はてんてこまい。 大島先生のところも1週間前に送った着物一式が、おさらい会当日になっても未着という、波瀾万丈な幕開けとなりました。
徒然草には、
能を付かんとする人、「良くせざらん程は、なまじひに人に知られじ。内々良く習ひ得て、差し出でたらんこそ、いと心憎からめ」と、常に言ふめれど、かく言ふ人、一芸も習ひ得ることなし。
とあります。つまりは「上手になってから人前で披露しよう」と言っているうちは「一芸も習ひ得ることなし」ということ。兼好さん、手厳しい。 ここまできたらジタバタせず、ヘタはヘタなりに一生懸命やるだけです。
集まった社中の方々は20名ほど。下は5歳から、上はなんと98歳という、ほぼ1世紀にわたる世代がそろいました。98歳のNさんはお一人で電車に乗っておけいこに通ってこられると聞いてびっくり。能は長ーく続けられる趣味ってことですね。
お着替え場所では、それぞれ支度がはじまります。
K嬢は仕立てたままタンスのこやしになっていた色紋付を初おろし。しつけ糸つきのまま持参して、周囲にやいのやいの言われながら袖を通しました。
袴をつけるので短めに着付けるのですが、鏡に映った自分の姿を見たK嬢、
「ねえ、バカボンみたいじゃない?」
と。短めに着るとおはしょりが大きくなっちゃうからね、仕方ないのです。。。さ、早いとこ袴つけましょう。
支度を手伝ってくださったのは、輝久先生のお姉さまの衣恵先生
袴をつけるとそれなりに皆、様になります。腰がくっと立ち、気持ちも背筋もシャンとして、ふるまいもキリリとする感じ。衣裳の効果を実感します。 扇もふだんのおけいこ用のとは違い、グレードアップした素敵なのを貸していただきました。おのおの、自分たちの着物や袴の色を考慮しながら好きなのを選びます。
つたない舞に少しでも花を添えておくれとばかりに、真剣に扇を選ぶ私たち
準備が整ったところでいよいよ本番。 最初は連吟(複数人でうたう謡)。 何度も言いますが、カラオケをのぞけば人前でうたうのは中学の合唱コンクール以来(カラオケだってもう何年も行ってない)。 位置につき、扇を手に持ち、深く息を吸う。あとはただただ正面を見据え、ひたすら声を前へ前へ。 身体に血が巡るのを感じながら、全員の声が重なり合うのを感じながら、無になってうたう。 緊張のうちにあっという間に終了。終わった直後は抜け殻です。
ほかの方の素謡や独吟をはさんで、ふたたび出番。今度は仕舞。 仕舞は一人ずつなのでもっと緊張。間違えずにやるので精一杯でしたが、先生の謡に導かれるようにして舞い終わりました。 久しぶりに「本番」の緊張感を味わって、いつもと違う回路や筋肉を使ったなぁという感じでした。
先生の謡の声をただ頼りに、無心に舞いました
最後は番外仕舞として、輝久先生のお姉様で同じく能楽師の衣恵先生が「天鼓」を、輝久先生が「八島」を舞って終了。ステージプロと一般の素人が、同じ場所で芸を披露し合う。ふだんの生活では接点のない世代の人と交流する。おさらい会ってすごい場です。
輝久先生の仕舞「屋島」。
短い時間にも場の空気をガラリと変えてしまう迫力に満ちていました
ま、兼好さんも「上手の中に交じりて、そしり笑はるるにも恥じず」努力していけば、「つひに上手の位になり」と言っていますので、うまいヘタにこだわらず、上手な人たちに交じって素直に精進していくことが大切なのですね。
終了後に記念撮影。
輝久先生、10回に渡り、丁寧にご指導くださいましてありがとうございました
さて、以上をもちまして謡・仕舞のおけいこ体験はいったん終了です。 年明けからは、「小鼓に挑戦の巻」がスタートします。教えていただくのは能楽小鼓方大倉流宗家・大倉源次郎先生。どんなおけいこ体験が待っているのか…。
年内の更新はこれで最後になります。 皆様、どうぞ晴れやかな新年をお迎えください。来年もどうぞよろしくお願いいたします。
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