小説家、谷崎潤一郎。 誰もが一度は聞いたことのある「春琴抄」「細雪」といった不朽の名作を生んだ文豪です。
彼の作品は今も読み継がれるのみならず、幾度となく映画や舞台で上演され、私達を惹きつけて止みません。谷崎潤一郎没後五十年となる今年、これまでのような映画や演劇ではなく、谷崎が愛した美しい音曲と舞踊から彼の豊かな作品世界を堪能する-そんな嬉しい公演が開かれることになりました。
東京・日本橋に生まれ、関西へと移り住んだ谷崎。彼の作品に描かれた音曲を、第一部は東京の長唄・清元に始まり、第二部の関西の地歌へとめぐっていく。舞台には現代の邦楽界を支える実力派が勢ぞろい!能楽師 梅若紀彰氏の朗読とともに、その美しい音に浸ることができるとは何と幸せな時間でしょうか。
中でも個人的に私が惹かれるのは第二部。大阪の地歌筝曲家・菊原琴治氏から三味線を学んでいた谷崎は地歌をこよなく愛好し、はんなりと艶のある上方の文化は作品にも深く影響を与えています。
今回、その地歌『茶音頭』や『雪』にご出演の菊原光治、菊原精峰、菊萌文子の三氏は、菊原琴治の娘で人間国宝の菊原初子氏の元で学んだ実力派。そして『残月』にご出演の人間国宝 富山清琴氏もまた、谷崎と親しく交流し谷崎の墓前に『残月』を捧げた初代清琴氏を父に持つ奏者です。谷崎ゆかりの名手が奏でる音曲と、上方舞の舞踊家 山村光氏の気品のある美しい舞とともに、谷崎の文学を味わう。文学も音曲も舞も、それはもう匂い立つような美しさだろうと、ちらしを見ながらついうっとりしてしまいます。
~文章からは読み取れない、紙背に広がり行間にあふれる奥深い音色をご堪能ください~ (公演ちらしより)
文学ファンも伝統芸能ファンも是非! この冬、特に心惹かれる公演です。
朗読と演奏で綴る 谷崎潤一郎 没後五十年 文豪の聴いた音曲
2015年12月19日(土)午後2時開演 会場:国立劇場 小劇場
★予約開始=10月11日(日)午前10時から!
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