お箏(こと)は、チョット不運な楽器かもしれない。 商店街でも甘味屋でもテレビでも、BGMとして溢れているから、 私たちは既にお箏を知ったつもりでいる。
そして、そんなお箏の音色に惹かれることは、あまりない。
かくしてお箏は、「雅な楽器」という美しく味気ないイメージの薄皮に覆われて、 その中身は、好き嫌いの対象にさえならない。 エアコンの稼働音のように、少し気になるが気にならない、 そんな音として、スピーカーから垂れ流されている。
アコースティック楽器の音色が、二重、三重の機械を通り抜けて、 空にばら撒かれて、その魅力を発揮できるわけがない。
ホントのお箏のことを、知ってほしい。 絶好の機会が、12月21日(月)、四ツ谷の紀尾井ホールで。 「国産絹箏弦を聴く会」。しかも、無料。
現代では、お箏は化学繊維の弦を使うことが殆ど。 耐久性の問題や大きなホールでの演奏を前提としているためだ。 その中でも、絹弦の価値を伝えたいと頑張っている人たちがいる。 ここんでは、「伝統芸能な旅」企画で、そんな絹弦製作の現場を訪ねた。 絹弦は、細い細い絹糸が何本も重ねて撚られている。 その糸の重なりの中で倍音が生まれ、豊かな音色が生まれるのだとか。 今回の公演は、昔ながらの絹の弦を、今一度見なおし、いや聴きなおしてみよう、というもの。 今や危機に瀕している音色。 リアルな空間でしか感じることのできない音色がそこにある。
師走のひと時、ちょっと立ち止まって、耳を澄ませてほしい。 お正月には、甘味屋さんのスピーカーから流れるお箏が、 好きか、嫌いになりますように。
◇第二回 国産絹箏弦を聴く会 12月21日(月)開演:18時30分 四ツ谷 紀尾井小ホール 申込TEL:紀尾井ホールチケットセンター 03-3237-0061 ※事前予約してくださいね~。
※スピーカーの写真はイメージです。
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