「太郎冠者(たろうかじゃ)」という言葉を初めて目にしたのは小学生のとき。 国語の教科書に載っていた「附子(ぶす)」でだった。 「あおげ あおげ」「あおぐぞ あおぐぞ」 ストーリーの面白さより言葉のリズムが妙に印象深く、以来ずっと記憶に残っている。
それからウン十年がたち、実際に能舞台で太郎冠者を見るようになって、 「ところで太郎冠者ってよく出てくるけど、誰? 同じ人?」 という疑問が頭をもたげた。
そう、名前だとばかり思っていた太郎冠者は実は固有名詞ではなかったのだ。 冠者というのは家来のことで、太郎は名前ではなく1番目という意味、つまり太郎冠者は筆頭家来をさす。 狂言ではこの太郎冠者が主役で話が進んでいくものが多く、演目ごとにキャラクターは様々。 おっちょこちょいだったり、小ずるかったり、アホだったり。 共通しているのは「憎めないやつ」というところか(酒好きでもある)。
その「憎めなさ」や「愛嬌」がどれだけにじみ出るかは役者次第。 名人の太郎冠者は舞台に登場しただけで愛おしく、それでいて笑いがこみ上げてくる。
そんな太郎冠者をフィーチャーした公演がこちら。 題して「あの太郎冠者・この太郎冠者・その太郎冠者」。
会場は高層ビルの地下に現れるスペクタクル空間「セルリアンタワー能楽堂」。 客席と舞台との距離が近く、演者の放つ気を身近に感じられる親密空間で、 太郎冠者が登場する演目が3本。 三者三様の太郎冠者のキャラの違いをお楽しみあれ。
セルリアンタワー能楽堂 狂言の会-茂山狂言会- あの太郎冠者・この太郎冠者・その太郎冠者
2016年1月16日(土)午後1時開演(午後3時00分終演予定)
解説 茂山茂 狂言「茫々頭」 太郎冠者 茂山七五三 主人 網谷正美 後見 井口竜也 狂言「寝音曲」 太郎冠者 茂山千五郎 主人 松本薫 後見 山下守之 狂言「空腕」 太郎冠者 茂山正邦 主人 茂山茂 後見 井口竜也
チケット発売は10月16日(金)10時より。 詳細はこちら。
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